ビストロファソン

元電力マンが旭川で営むフランス料理、ビストロファソン

職人

よお、職人だね。

この響き、たまりません。こぶしを聞かせて言ってもらうとさらに興奮します。

でも、一番好きな台詞はかもしれません。

 

今回は今まで出会った素晴らしい職人や、職人を目指して思うことを書きました。

 

憧れの職人の軌跡

ある食料品店、魚や肉、野菜等を取り扱う対面販売の狭いスペースで巧みな包丁さばきで魚を下し、刺身を作る。無口な職人がいました。そんな男のエピソードを一寸紹介します。

 

アンコウを電柱に吊るし、さばく。

昔は、大きなアンコウがたくさんいました。アンコウは、吊るし切りですが、なかなか場所と設備がないとできません。その時、奇妙な行動にでました。アンコウの口にフックをかけると外に出て、なんと、電柱のステップルにかけたのです。アンコウの吊るし切りの始まりです。道路の上の魚の木箱には、身があふれ、みるみるアンコウはになっていきました。見物人は、私と近所のおばさん。

神業的な包丁さばきでした。

よお、職人だね。

きっと満足したことでしょう。

あれからその姿を一度も見ることはありませんでした。

今から、40年前の実話です。

きっと今ならインターネット上で凄いことになっているでしょうね。 

 

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 『父の形見の刺身包丁。大切に保管してあります。使いたいのですが、フランス料理な                  のでなかなか使えません。』

 

 

ライバルだった職人へのオマージュ

社会人への第一歩は某電力会社。まさに職人の巣のような職場でした。ヘドロとにまみれ、何トンもの発電機や水車を分解、組み立てを行う。

組み立ての精度は百分の一ミリ単位。

よお、職人だね。

職人の基礎を教えてくれた前職場、素晴らしい先輩後輩に恵まれました。

ハンマーを振る姿、かっこよかった。怪我をしないよう、ご活躍ください。

 

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 (電力マン時代の道具。)

 『1番上が、パイプレンチ:何故か懐かしい。

  2番目が、+ドライバー:電気の配線では、いつも使用していました。大きな作業  

               では、手が震えることもしばしばでした。

  3番目が、尺度定規:設計ではいつもお世話になりました。

  4番目が、スケール:胸ポケットにいつも入っていました。』

※今でも全部現役です。

 

 

料理人という職人を目指す

技術屋あがりのため食を化学する、そんなイメージが先行しますが、実際は

アナログ人間で、インターネットデビューも1か月前である。

 

修業を含め、独立してからも厨房の中には最新設備はなく、ガスオーブンも旧式である。4年前までは、温度調整もメモリはついているが、手で温度を測る、そんな感じのオーブンでした。(-_-;)

半面、最新設備を整え、1℃まで温度設定しながら調理をするデジタル派の

料理人もいます。

 

また、温度は手で測る(わかる)すごい料理人もいます。食材は、見て

触っただけで美味しいかわかるつわものもいます。(^^;)

昔は、ジビエの季節などは、熟成させてからの提供が普通でした。

最近の赤肉の熟成ブームと同じですね。

 

昔は、経験を兼ね備えた料理人が沢山いました。

 

食品を調理する上で、化学的な知識=数学知識を活用することは安全で正確な料理をつくる大切な要素ではありますが、料理をつくるという作業においては必ずしも必要ではありません。私の目指す料理人像は、「職人気質」

 

今まで出会った大勢の職人には知識だけでは裏打ちできない経験を技術に変えられる素晴らしい職人がいました。

 

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(愛用の包丁。)

『左の包丁:20年前、初めて買った牛刀です。一回り以上小さくなりました。今は、片刃にして、魚用として使っています。

 中の包丁:数年前にデビューした牛刀。左の包丁とこの包丁は同じサイズでした。

 右の包丁:2番目のお師匠さんにもらったペティーナイフ。』

 

 

あの日見た、アンコウをさばく父のように。

 

よお、職人だね

早くそんな台詞を言ってもらえるような職人を目指して

 日々、努力しています。